スクーリング講座「江戸しぐさコース」レポート
6月3日、今年度のスクーリング新講座「江戸しぐさ」コースを開催いたしました。新コースということに加え、話題の内容でもあるために30人の定員が満席になりました。ご参加下さいました皆様、誠にありがとうございました。
さて、この数年、AC(社団法人公共広告機構)の広告などで目にする機会も増えた江戸しぐさですが、「傘かしげ」や「肩引き」といった動作だけがクローズアップされているような印象がありました。
今回、NPO法人江戸しぐさの理事長で、江戸しぐさを現代に蘇らせた越川禮子先生を講師にお迎えし、「江戸しぐさ」の本質について2時間半にわたってご講義をいただきました。
江戸しぐさは、江戸に住むべらんめぇ調の江戸っ子の所作のように思っている方が多いようですが、実は、「商人しぐさ」「繁盛しぐさ」といわれるように、生活信条や哲学をもった町衆(まちしゅう)と呼ばれた商人のリーダー格(現在の商工会議所のメンバーのような存在)の人たちが身に着けていた「思草」だったそうです。ちなみに、本当の江戸っ子は大変丁寧な話し方をするそうです。
「思草」とは、その状況になると自然にアクションとして現れることで、今の言葉に言い換えると、“センス”や“くせ”に近いものだそうです。「マナー」が、相手に対して自分がなすべき配慮であると捉えれば、「思草」は他者の存在に関係なく、自分がそうしなければ気が済まないものであり、自然と出てしまう行為と考えればよいでしょう。
具体的には、家に帰ったら手を洗うことは誰でもします。また、モノを落とした人がいたら反射的に拾ってあげたりるでしょう。このことは、状況や相手の存在の有無に関係なく、人として幼いときから躾けられ、身につけているものです。
江戸の商人達は、幼少の頃からこういう感性を育む教育をしていたので、町人の居住が許されていた非常に狭く、過密な区域にあっても、思いやりを持って、快適な暮らしができていたのでしょう。ちなみに、人のことが考えられない井の中の蛙のことを「いなかっぺ」と言って蔑んだそうです。
さて、講義の後半では、江戸しぐさの本質は以下のような行為に集約されると越川先生はおっしゃいます。
第一 約束を守ること
第二 見て分かることは言わないこと
第三 結界覚え(相手の領域を侵さない、専門家を立てる)
第四 人のしぐさを見て決めよ
第五 尊異論(多数決とは反対の考え方)
これらは現代においても、人間関係を円滑にするために重要なポイントで、スマートなビジネスマンの条件といっても良いのではないかと思いました。
先生のお話を改めて文章にしてみると、なぜか違和感を感じるのは、江戸しぐさが、「口承文化」であることにも関係があるのかもしれません。直接、お話を伺いことから得られる感覚そのものが、まさに江戸しぐさが「感性」であるように実感します。
講義の終盤では、受講者がモデルとなって「肩引き」や「傘かしげ」の実演をしていただきました。なかなか当時の江戸っ子のように粋に振舞うのは難しいようですが、頭でわかっていることでも、実際にスムーズにすることは結構、難しいことなのだ、ということを理解することができました。
最後に、先生が私たちに教えてくれた言葉が「傍楽」=「働く」。傍にいる人を楽にすることが「働く」ことで、世のため人のために働いた時間が多い人が尊敬されるのが江戸の社会だったそうです。まさに、現代のボランティア精神にもつながる考え方ですが、こうした考え方が広まってくれば、最近の儲け偏重主義も是正され、思いやりにあふれた社会が実現できるのではないかと思いました。
私たちも、マナーを普及、啓発することによって、江戸時代に生きた人々のように思いやりにあふれた社会を実現させる力になってきたいという気持ちを強くしました。
講義のテキストとして使用した越川先生の「暮らしうるおう江戸しぐさ」を協会おすすめ本に追加いたしましたので、ご関心のある方はぜひご一読下さい。













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